人を採用しても長く続かず、「最近、人が定着しない気がする」と感じる店舗があります。
採用そのものはできているため、募集方法よりも採用後に原因があるように見えるかもしれません。
しかし、面接で口頭説明に頼っている店舗では、採用を始める段階で応募者へ何を伝えるかが十分に整理されていないことがあります。
求人には勤務条件や仕事内容を載せ、詳しいことは面接で説明する。
この進め方では、応募者が最初に持つ職場のイメージと、面接や勤務開始後に知る実態との間に差が残りやすくなります。
人が短期間で辞めると、勤務開始後の教育や人間関係、シフトなどを振り返ることが多くなります。
もちろん、それらが影響する場合もあります。
一方で、働き始める前にどのような職場だと理解していたのかも確認する必要があります。
求人を見た段階では簡単な仕事だと思っていたものの、実際には複数の業務を並行する必要があった。
勤務時間は理解していても、忙しい時間帯の様子までは知らなかった。
このような差は、勤務開始後になって初めて違和感として表れます。
採用拠点という視点では、定着を採用後だけの問題として切り離しません。
募集を始めるときから、応募者がどのような職場像を持つのかまで含めて考えます。
人が必要になると、まず求人媒体を開き、時給、勤務時間、曜日、仕事内容などを入力します。
早く募集を始めたい店舗では、必要項目を埋めることが最初の作業になりやすいでしょう。
そのとき「職場について詳しいことは面接で話せばよい」と考えると、求人に出る情報は条件中心になります。
応募者は、その限られた情報から自分なりに働く姿を想像して応募します。
採用ページに、仕事内容だけでは分からない現場の様子や働き方を残しておけば、募集開始時から応募者へ渡せる情報が増えます。
面接を受けなければ詳しいことが分からない状態にせず、応募を考えている段階から職場について確認できます。
店長が現場をよく知っていれば、面接で仕事について詳しく説明できます。
質問にもその場で答えられるため、文章で細かく伝えなくても問題がないように感じることがあります。
ただし、面接で初めて詳しい情報を聞くということは、応募するまでの判断にはその情報が使われていないということでもあります。
応募者は求人に書かれていた内容から職場を想像し、そのイメージを持ったまま面接へ進みます。
採用ページは、面接担当者の説明をなくすためのものではありません。
面接で話す内容の一部を応募前から確認できる状態にし、応募者が自分に合う職場なのかを早い段階から考えるための場所です。
採用拠点として情報を持つことで、「詳しいことは会ってから」という採用だけに依存せず、募集を始めた時点から同じ職場像を伝え続けることができます。
面接では説明したはずなのに、働き始めてから「聞いていたイメージと違った」と言われることがあります。
この場合、店舗側では「きちんと説明した」という認識が残ります。
しかし口頭説明は、応募者によって受け取り方が変わります。
仕事内容を一度に多く説明すれば、すべてを覚えているとは限りません。
面接中は質問への回答や勤務条件の確認にも意識が向いているため、細かな説明が残らないこともあります。
採用ページに面接でも伝えている内容が整理されていれば、応募者は面接前にも面接後にも確認できます。
一回の会話だけで職場の理解を完成させる必要がなくなります。
口頭で伝えたかどうかではなく、応募者が自分のタイミングで確認できる状態になっているかを見ることで、入社後の「知らなかった」がどこから生まれたのかも捉えやすくなります。
求人では「簡単な作業」と書いていても、実際には忙しい時間帯に複数の仕事を切り替えることがある。
シフト相談可能と書いていても、特定の曜日には協力してほしい。
このように、短い求人文だけでは伝えきれない部分があります。
それらをすべて面接で補うだけでは、応募前にできあがったイメージが十分に修正されないまま採用へ進むことがあります。
採用ページに具体的な働き方を残すことで、応募者は「自分が想像していた仕事」と「店舗が実際に伝えている仕事」を比較できます。
合う部分だけでなく、自分には難しそうな部分も応募前から確認できます。
採用拠点という考え方では、応募を増やすことだけを目的に情報を出すのではありません。
採用前に持った期待と、採用後に経験することを近づけることも採用の一部として扱います。
人が定着しない気がするとき、退職した人へのフォローや勤務開始後の対応だけを見直しても、同じ状態が繰り返されることがあります。
採用前にどのような職場像を伝えていたかが変わらなければ、次の応募者も同じ情報から判断するためです。
採用ページに店舗として継続して伝える内容があれば、募集を始めるたびに求人条件だけを並べる状態から離れられます。
応募者が面接を受ける前にも、仕事内容や働き方について確認できる状態をつくれます。
採用拠点という視点でも、定着は勤務開始後に突然考えるものではありません。
採用を動かし始めた時点から、どのような期待を持って応募してもらうのか、その期待が実際の現場とつながっているのかを考えます。
採用ページは、店舗の良い部分だけを伝える場所ではありません。
応募前に知っておいた方がよい現場の実態も含めて、働くかどうかを判断するための情報を残す場所です。
人が定着しない気がする状態は、採用したあとの関わり方だけが原因とは限りません。
採用を始めるときに条件だけを外へ出し、仕事の実態は面接で口頭説明するという進め方によって、応募者の最初の想像と実際の職場に距離が生まれている場合があります。
採用ページに何を載せるかを考えることは、面接の説明を文章へ移すだけではありません。
採用の動き出しから「働く前に何を知ってもらうか」を整理することでもあります。
定着への違和感を見直すなら、退職した時点からさかのぼり、最初に求人を出そうとした段階でどのような職場像を渡していたかまで確認する必要があります。