求人を出しているのに、人手不足のままの状態が続いている。
個人経営の店舗では、この状態が長くなるほど「そもそも応募する人が少ない地域なのではないか」「条件をもっと良くしないと難しいのではないか」と考えやすくなります。
しかし求人〜応募の間を見ると、応募者が店舗を選ぶための情報が十分に外へ出ていないことがあります。
店主にとっては当たり前になっている職場の特徴も、求人を初めて見る人には分かりません。
条件は読めても「なぜこの店舗を選ぶのか」が見つからなければ、比較の途中で候補から外れることがあります。
人が足りなくなると求人を出し、応募がなければ掲載期間を延ばす。
しばらくして募集を止めても、人手が必要になれば再び掲載する。
この動きを繰り返している個人経営の店舗もあります。
求人を出す回数が増えれば、それだけ応募の機会も増えるように見えます。
ただ、毎回伝えている内容が時給、勤務時間、仕事内容、応募条件だけなら、応募者が比較するときの材料は大きく変わりません。
同じ地域に似た条件の求人が並んだとき、「家から近い」「時給が少し高い」といった条件だけで比較されやすくなります。
店舗で働く人との距離感や、仕事を覚えるときの雰囲気、店主がどのような考えで店舗を運営しているかは、求人票だけでは見えないままです。
採用拠点という考え方を持つと、求人を出すことだけではなく、応募者が店舗を選ぶための情報をどこに残すかまで採用活動に含めて考えられます。
応募者が一つの求人だけを見て決めるとは限りません。
気になる求人をいくつか開き、勤務時間や場所、仕事内容を見比べながら候補を絞ることがあります。
このとき条件が近ければ、次に知りたくなるのは数字では見えない違いです。
「どんな人と働くのか」「忙しいときはどんな雰囲気なのか」「未経験ならどのように仕事を覚えるのか」といった情報が、応募するかどうかを考える材料になります。
採用ページがあれば、求人票の枠内では伝えにくい内容を別の場所で確認できます。
求人媒体で興味を持った人が、店舗名を検索したあとにも働く場所としての情報へたどり着けるため、条件だけで比較を終えずに済みます。
個人経営だからこそ伝えられる特徴があっても、それが店主の頭の中だけにあれば、応募者には存在していない情報と同じです。
応募が少ないと、時給や勤務日数、シフト条件を見直すことがあります。
条件の調整が必要な場合はありますが、それだけで応募者が店舗を選ぶ理由まで明確になるとは限りません。
たとえば二つの店舗で勤務条件がほぼ同じなら、応募者は別の違いを探します。
そのとき片方には働く人の様子や仕事の進め方が見え、もう片方には募集条件しかなければ、比較できる情報量に差が生まれます。
採用ページは条件を良く見せるための場所ではありません。
求人票だけでは判断しきれない部分を確認し、「自分がここで働く姿を想像できるか」を考える材料を残す場所です。
採用拠点も、求人媒体を増やすことと同じではありません。
どの媒体から求人を見つけても、店舗として共通して伝えたい情報へ戻れる状態を持つことで、媒体ごとに採用を完結させないための基盤になります。
個人経営の店舗では、店主自身が現場をよく知っています。
どの時間帯が忙しいか、新しく入った人が最初に何を覚えるか、どのような人なら馴染みやすいかも経験として理解しているでしょう。
そのため面接まで来てもらえれば詳しく説明できる一方、応募前にはその情報がほとんど出ていないことがあります。
「会えば説明できる」という状態では、会う前に迷っている人へ情報が届きません。
採用ページにこうした内容を残しておけば、店主が一人ずつ説明する前から、応募者自身が職場について確認できます。
店主の説明力をなくすのではなく、これまで会話の中にしかなかった情報を応募前にも置いておくという役割です。
応募するかどうかの判断は、面接で店主と会ってから始まるわけではありません。
求人を見つけ、検索し、他店と比較している時点ですでに始まっています。
求人票に必要事項がすべて書かれていても、応募者が「この店舗に応募してみよう」と決める材料まで揃っているとは限りません。
個人経営の店舗には、大手店舗とは異なる働き方や距離感がある一方、それを求人の短い文章だけで伝えるのは難しい場合があります。
情報が不足すると、応募者は分からない部分を想像で補うか、判断しやすい別の求人へ移ります。
採用ページは、その判断できない部分をすべて魅力的に見せるためのものではありません。
応募前に知っておいてほしいことを残し、応募者が自分に合うかどうかを確認できる状態をつくるために使えます。
採用拠点として情報を持っておけば、求人を掲載するたびに店主が一から説明内容を考える必要もありません。
募集している時期だけ情報を出すのではなく、店舗として伝える内容を継続して保持できます。
人手不足のままの状態が続いていると、どうしても「応募が来ない」という結果に目が向きます。
しかし求人〜応募の間では、その結果が出る前に応募者の比較が行われています。
採用ページがなくても求人は掲載できます。応募を受け付けることもできます。
ただ、求人を見た人がもう少し店舗について知りたいと思ったとき、確認できる情報がなければ、条件以外の理由で店舗を選ぶことが難しくなります。
採用拠点という視点で考えると、人手不足への対応は求人を掲載したところで終わりません。
応募者が比較している時間にも店舗の情報が残り、店主が直接説明していなくても、働く場所として確認できる状態まで含めて考えることになります。
採用ページに店舗独自の情報を残す意味もここにあります。
求人の閲覧数を増やすためではなく、すでに求人を見つけた人が、応募するかどうかを考えるための材料を持てるようにするためです。
人手不足が続いている状態は、単純に求人の露出が足りないことだけで生まれているとは限りません。
店主の中には店舗を選ぶ理由になる情報があるのに、それが応募前の比較場面まで届いていない。
そのため、求人を何度出しても条件だけで比較され、応募へ進む前に候補から外れていることがあります。
求人〜応募を見直すときは、何人に求人を見てもらったかだけでなく、「見た人がこの店舗を選ぶために何を確認できたか」まで見る必要があります。
個人経営の店舗で人手不足が長く続くとき、応募前の比較材料が外に出ているかどうかも、確認したいポイントの一つです。